古い時代
世界はまだ男性中心の社会、霧に覆われ
サラリーマンと専業主婦、選択肢の少ない時代だった

だが、いつしか女性の社会進出がおこり
それと共に多様化がもたらされた
男と女と、キャリアと子育てと、そして結婚と離婚と

男女平等の時代のはじまりだ

だが、やがて選択肢は消え、怒りだけが残る

今や、保育園はまさに満員
人の世には届かず、待機児童ばかりが増え
人の中に、行き場のないストレスが現れはじめていた…

 

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次第に辺りは明るくなっていった。夏の強い朝日は海面に反射し、俺の中の闇を一掃してしまうくらい美しかった。光に照らされた粒子が新しい世界を生み出していた。

素足で海に入ると、ぬるく、肌に滑らかな感覚が伝わってくる。聞こえるのは、波の音。何もない浜辺に、何者でもない自分。世界は自分の心を反射し、平和な心は美しい世界を与えてくれる。ああ、そうか。と理解する。人生において一番大事なのは、この感覚なのだと。

 

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家出の夜は興奮して眠れなかった。

俺はカバンに入っていたプリントや枯れ木をライターで燃やし篝火を灯した。熱く、明るい。静寂の暗闇の中に生命が誕生する。

俺の中のプリミティブな感情が奮い起つ。脳内で化学変化が起こり心に平静が訪れる。

人間には「火」が必要なのだ。特に暗闇にいるときは。

 

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あれだけ美しかった海は、吸い込まれそうな闇に変わった。深く、暗く、数メートル入っただけで何かに引きずり込まれそうだ。

圧倒的な美しさと恐怖。普段生きている社会は世界の一部に過ぎないということを実感する。海に来ただけでこれだ。宇宙にでも行こうものなら、聖職者になれるくらい達観するだろう。

俺は砂浜で一夜を過ごすことに決めた。学校のカバンを枕にして、MP3プレイヤーでthe pillowsの『ride on shooting star』を聴く。辺りには誰もいない。だだっ広い砂浜に俺1人だ。

涼しい海の風と少しの不安感が、汗ばんだ身体を冷やしていく…。

 

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そういえば家出は何年ぶりだろう。確か高校の頃に天神でスターウオーズ・エピソード2を観てそのままチャリで志賀島まで行ったことがある。

志賀島まで続く海の中道。両側の海には溶けるようなオレンジの太陽が映っている。彼方まで繋がっているような直線の道路。潮とアスファルトが焼ける夏の匂い。その全てがとてつもなく美しい。そしていつの間にか空はオレンジとディープブルーのグラデーションとなり、俺は誰もいない砂浜でそれを眺めながらコーラを飲む。対岸にはいつも生活している都会。人々が管理し合っている場所。だが今ここには俺しかいない。

月だけが俺を見ていた。

 

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